森 の 詩

2022/09/01 23:01



今回、喫茶店の土地の石積みをお願いしたのは「旅する石積み屋」の田代さん。

各地の美しい石積みの風景に魅せられ、その技や文化を残してゆきたい。

という思いがきっかけとなり始められたそうです。




石積みは、日本の伝統的な文化のひとつで、

先人たちによって受け継がれてきました。


石積みはただ美しいだけでなく、とても理に適った工法です。

水はけをよくして土を流れにくくする働きや、

建物の圧を支える土台の役割、

また、積み石の裏に敷き詰めた栗石は排水層として作用します。




一見無秩序に積まれている様に見える石積みも、

比重のかけ方や石の組み合わせなど、様々なところに知恵や技術が注がれています。

大きな石と小さな石がバランスを保つことで

地震でも崩れない石垣になるそうです。

また、万一崩れたとしても、ゴミになることなく、再び積み直して、修復することができます。




今回の現場で使った石は近所の方から頂いた石と、

伊那谷の川で採れた自然石(玉石)です。

職人さんたちは、その石がどこに収まるのか見立てをした後、

必要があれば道具を使って石を削り、

その場所にしっかりと納まる様に、何十キロにもなる石をゆっくりと積んでゆきます。



職人達のひとつひとつの手仕事を間近でみることができて、とても感銘を受けました。

と同時に、石達にどこか懐かしい感覚が生まれ、不思議と親しみを感じるようになりました。



地球を見つめてきた石の記憶と、

石達と共に生きてきた人の記憶…

石に触れてゆくうちに互いの記憶が響き合い、

忘れていた何かを思い出してゆくのかもしれません。




様々な時代を生きてきた石達が、

今、この場所で新たな物語を築いてゆきながら

これから何世代にも渡って

その記憶を繋いでいってくれるのでしょう。




わたし自身もあらためて、

この素晴らしい技術と知恵、自然の持つ神秘を

次の世代に残したいと思いました。


関わって頂いた職人さん達、

素晴らしい体験と風景を、

ありがとう。