今回、喫茶店の土地の石積みをお願いしたのは「旅する石積み屋」の田代さん。各地の美しい石積みの風景に魅せられ、その技や文化を残してゆきたい。という思いがきっかけとなり始められたそうです。石積みは、日本の伝統的な文化のひとつで、先人たちによって受け継がれてきました。石積みはただ美しいだけでなく、とても理に適った工法です。水はけをよくして土を流れにくくする働きや、建物の圧を支える土台の役割、また、積み石の裏に敷き詰めた栗石は排水層として作用します。一見無秩序に積まれている様に見える石積みも、比重のかけ方や石の組み合わせなど、様々なところに知恵や技術が注がれています。大きな石と小さな石がバランスを保つことで地震でも崩れない石垣になるそうです。また、万一崩れたとしても、ゴミになることなく、再び積み直して、修復することができます。今回の現場で使った石は近所の方から頂いた石と、伊那谷の川で採れた自然石(玉石)です。職人さんたちは、その石がどこに収まるのか見立てをした後、必要があれば道具を使って石を削り、その場所にしっかりと納まる様に、何十キロにもなる石をゆっくりと積んでゆきます。職人達のひとつひとつの手仕事を間近でみることができて、とても感銘を受けました。と同時に、石達にどこか懐かしい感覚が生まれ、不思議と親しみを感じるようになりました。地球を見つめてきた石の記憶と、石達と共に生きてきた人の記憶…石に触れてゆくうちに互いの記憶が響き合い、忘れていた何かを思い出してゆくのかもしれません。様々な時代を生きてきた石達が、今、この場所で新たな物語を築いてゆきながらこれから何世代にも渡ってその記憶を繋いでいってくれるのでしょう。わたし自身もあらためて、この素晴らしい技術と知恵、自然の持つ神秘を次の世代に残したいと思いました。関わって頂いた職人さん達、素晴らしい体験と風景を、ありがとう。